る。
「やあい、豆腐屋、だめだぞ」
嘲笑《ちょうしょう》罵声《ばせい》を聞くたびに千三は頭に血が逆上《ぎゃくじょう》して目がくらみそうになってきた。かれが血眼《ちまなこ》になればなるほど、安場のノックが猛烈になる。やっと球をつかんだかと思うと一塁へ三尺も高い球をほうりつける。見物人はますますわらう。
さんざんな悪罵《あくば》の中にノックはおわった。千三はいくどもいくども滑ったので身体《からだ》はどろだらけになった、その他の人々も同様であった。
やがて審判者がおごそかに宣告した。
「プレーボール!」
浦中は先攻である。黙々《もくもく》の投手五|大洲《だいしゅう》ははじめてまん中にたった、かれは十六歳ではあるが身長五尺二寸、投手としてはもうしぶんなき体格である、かれは手製のシャツを着ていた、それは白木綿《しろもめん》で母が縫《ぬ》うてくれたのだが、かれはその胸のところに墨黒々と片仮名で「モクモク」と右から左に書いた。かれがこれを着たとき、すずめがそれだけはよしてくれといった、かれは頑《がん》としてきかない。
「おれは日本人だから日本の文字のしるしを書くんだ、毛唐《けとう》のまねなん
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