、その先頭にコーチャーの安場は七輪《しちりん》のような黒い顔をしてこけ色になった一高の制服制帽で堂々と歩いてくる。
いずれを見てもそれはいかにもみじめな一隊であった、かの花やかな浦中と対照してこれは何というきたならしい選手達だろう、見物人は戦わぬうちに勝敗を知った。
「だめだよ、つまらない」
もう見かぎりをつけて帰ったものもある。一同は肩ならしをやったうえで、さっとシートに着いた、安場は上衣《うわぎ》を脱いでノックした。それはなんということだろう。
元来晴れの戦場におけるノックには一種の秘訣《ひけつ》がある、それは難球を打ってやらぬことである、だれでも取れるような球を打ってやれば過失がない、過失がなければ気がおちつく、特に試合になれぬチームに対してはノッカーはよほど寛大に手心せねばいたずらに選手をあがらしてしまうおそれがある。
なにを思ったか安場のノックは峻辣《しゅんらつ》をきわめたものであった、難球また難球! 第一番に三塁手がミスする、ついでショートの青木、これもみごとにミスする、やりなおす、またミスする、三度、四度! 千三は次第に胸が鼓動《こどう》した、見物人は口々にののし
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