か死んでもしやしないよ」
 これをきいて黙々《もくもく》先生は感歎した。
「松下! おまえはいまにえらいものになるよ」
 見物人はいまかれの胸の片仮名を見て一度にどっとわらった。
「やあい、モクモク」
「モクネンジンやあい」
「モク兵衛《べえ》やあい」
 だがかれは少しもひるまなかった、かれの鉄砲のごとき速球はまたたく間にふたりを三振せしめた、つぎは柳光一である。光一はボックスに立ってきっと投手を見やった、かれは速球に対して確信がある。千三は小学校にありしとき光一のくせをよく知っている、かれは光一がかならず自分の方へ打つだろうと思った。
「打たしてもいいよ」と千三は五大洲にいった。
「よしッ」
 五大洲はまっすぐな球《たま》をだした。戞然《かつぜん》と音がした、見物人はひやりとした、球ははたして千三に向かった、千三は早くも右の方へよった。
「しめたッ」
 と思う間もなくかれは足をすべらした、喝采《かっさい》の声が起こった、球は一直線に中堅《ちゅうけん》の方へ転がった。千三の目から涙がこぼれた。光一は早くも二塁に走った。
 つぎの打手は敵の主将小原である。ホームランか三塁か、いずれにして
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