けに移してわらじをはいている。
「伯父さん、ぼくが商売に出ますから伯父さんはやすんでください」
 と千三はいった。
「今日《きょう》は日曜だからおまえは休め、おまえは今日大事な戦争にゆかなきゃならないじゃないか」
「野球は午後ですから、朝だけぼくは売りにでます」
「いやかまわない、わしもおひるからは見物にゆくぞ、しっかりやってくれ」
「ありがとう伯父さん、それじゃ今日は休ましてもらいます」
「うむ、うまくやれよ、金持ちの学校に負けちゃ貧乏人の顔にかかわらあ[#「かかわらあ」は底本では「かからあ」]」
 伯父さんはこういってらっぱをぷうと鳴らしてでていった。千三は井戸端《いどばた》へでて胸一ぱいに新鮮な空気を呼吸した、それからかれはすっぱだかになって十杯のつるべ水を浴びて身をきよめた。
「どうぞ神様、ぼくの塾《じゅく》をまもってください」
 じっと目を閉《と》じて祈念するとふしぎにも勇気が次第に全身に充満する。朝飯をすまして塾へゆくと安場がすでにきていた。一|分時《ぷんじ》の違いもなく全員がうちそろうた。そこで先生が先頭になって調神社《つきのみやじんじゃ》へ参詣する、それから例の空《あ》
前へ 次へ
全283ページ中193ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 紅緑 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング