発《ふんぱつ》するか」
「先生」
「それとも生涯《しょうがい》豆腐屋でくちはてるか」
「先生! 私は……」
「なにもいうな、さあいもを食ってから返事をしろ」
 先生はいものなべをおろした、庭はすでに暮れて落ち葉がさらさらと鳴る、七輪の火が風に吹かれてぱっと燃えあがると白髪《はくはつ》白髯《はくぜん》の黙々《もくもく》先生の顔とはりさけるようにすずしい目をみひらいた少年の赤い顔とが暗の中に浮きだして見える。

         八

 黙々《もくもく》先生に系図を見せられたその夜、千三はまんじりともせずに考えこんだ、かれの胸のうちに新しい光がさしこんだ。かれは嬉しくてたまらなかった、なんとも知れぬ勇気がひしひしおどり出す。かれは大きな声をだしてどなりたくなった。
 眠らなければ、明日《あした》の商売にさわる、かれは足を十分に伸ばし胸一ぱいに呼吸をして一、二、三、四と数えた。そうしてかれはあわいあわい夢に包まれた。
 ふと見るとかれはある山路を歩いている。道の両側には桜《さくら》の老樹が並んでいまをさかりにさきほこっている。
「ああここはどこだろう」
 こう思って目をあげると谷をへだてた向
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