棚を探したがやがて二、三枚の紙つづりを千三の前においた。
「おい、これを見い、わしはきみに見せようと思って書いておいたのだ」
「なんですか」
「きみの先祖からの由緒書《ゆいしょが》きだ」
「はあ」
 千三は由緒書きなるものはなんであるかを知らなかった、でかれはそれをひらいた。
「村上天皇《むらかみてんのう》の皇子《おうじ》中務卿《なかつかさきょう》具平親王《ともひらしんのう》」
 千三は最初の一段高く記した一行を読んでびっくりした。
「先生なんですか、これは」
「あとを読め」
「右大臣|師房卿《もろふさきょう》――後一条天皇《ごいちじょうてんのう》のときはじめて源朝臣《みなもとあそん》の姓《せい》を賜《たま》わる」
「へんなものですね」
 先生は七輪の火をふいたので火の粉がぱちぱちと散った。
「――雅家《まさいえ》、北畠《きたばたけ》と号す――北畠親房《きたばたけちかふさ》その子|顕家《あきいえ》、顕信《あきのぶ》、顕能《あきよし》の三子と共に南朝《なんちょう》無二の忠臣《ちゅうしん》、楠公《なんこう》父子と比肩《ひけん》すべきもの、神皇正統記《じんのうしょうとうき》を著《あら》わして
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