。
「おい、君のおけの上にこれを載《の》せてくれ」
千三はだまって一礼した。先生は炭だわらをおけの上に載せ、そのまま自分の肩を入れて歩きだした。
「先生! ぼくがかついでお宅《たく》まで持ってゆきます」
と千三がいった。
「いやかまわん、おれについてこい」
ひょろ長い先生のおけをかついだ影法師が夕日にかっきりと地上に映《うつ》った。
「きみは病気か」
「いいえ」
「どうしてこない?」
「なんだかいやになりました」
「そうか」
先生はそれについてなにもいわなかった。
黙々《もくもく》先生がいもだわらを載せた豆腐をにない、そのそばに豆腐屋のチビ公がついてゆくのを見て町の人々はみんな笑いだした。ふたりは黙々塾《もくもくじゅく》へ着いた。
「はいれ」と先生はてんびんをおろしてからいった。
「はい」
もう日が暮れかけて家の中は薄暗かった、千三はわらじをぬいで縁端《えんばた》に座った。先生はだまって七輪《しちりん》を取りだし、それに粉炭をくべてなべをかけ、七、八本のいもをそのままほうりこんだ。
「洗ってまいりましょうか」
「洗わんほうがうまいぞ」
こういってから先生はふたたび立って書
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