り取る鬼共だ」
 その夜も夜学を休んだ、その翌日も……。
「おれがチビだからみんながおれをばかにしてるんだ、おれが貧乏だからみんながおれをばかにしてるんだ」
 かれの母はかれが夜学へもいかなくなったのを見て心配そうにたずねた。
「千三、おまえ今夜も休むの?」
「ああ」
「どうしてだ」
「ゆきたくないからゆきません」
 かれの声はつっけんどんであった、母は悲しそうな目でかれを見やったなりなにもいわなかった、千三は夜具の中に首をつっこんでから心の中で母にあやまった。
「お母《かあ》さん堪忍《かんにん》してください、ぼくは自分で自分をどうすることもできないのです」
 このすさんだ心持ちが五日も六日もつづいた、とある日かれは夕日に向かってらっぱをふきもてゆくと突然かれの背後《うしろ》からよびとめるものがある。
「おい青木!」
 夕方の町は人通りがひんぱんである、あまりに大きな声なので往来の人は立ちどまった。
「おい、青木!」
 千三がふりかえるとそれは黙々《もくもく》先生であった、先生は肩につりざおを荷ない、片手に炭だわらをかかえている、たわらの底からいものしっぽがこぼれそうにぶらぶらしている
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