がわずかに見える。
「おれはあいつにあやまらなきゃならない」巌は脱兎《だっと》のごとくはだしのままで外へでた。そうして突然チビ公の前に立ちふさがった。
「青木! おい、堪忍《かんにん》してくれ、なあおいおれは悪かった、おれは今日から三害を除《のぞ》くんだ」

         七

 お宮のいちょうが黄色になればあぜにはすすき、水引き、たでの花、露草《つゆくさ》などが薄日《うすび》をたよりにさきみだれて、その下をゆくちょろちょろ水の音に秋が深くなりゆく。
 役場の火事については町の人はなにもいわなくなった、阪井猛太は助役をやめてせがれの巌と共に川越《かわごえ》の方へうつった、中学校には新しい校長がきた。浦和の町は太平である。
 チビ公はやはり一日も休まずに豆腐を売りまわった、それでも一家のまずしさは以前とかわりがなかった、かれは毎日らっぱをふいて町々を歩いているうちにいくどとなく昔の小学校友達にあうのである、中には光一のようにやさしい言葉をかけてくれるものもあるが、多くは顔をそむけて通るのである。チビ公としても先方の体面をはばかってそしらぬ顔をせねばならぬこともあった、とくにかれの心を
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