ために善事をつくした。ここにおいてこの村は太平和楽になった。
巌は読むともなしにそれを読んだ。突然《とつぜん》かれの頭に透明な光がさしこんだ。かれは呼吸《いき》もつかずにもう一度読んだ。
「三害を除こう、おれは男だ」かれはこう叫んだ。
「おれに悪いところがあるならおれが改めればいい、お父様《とうさま》に悪いところがあるならおれがいさめて改めさせればいい、ふたりが善人になればこの町はよくなるのだ、南山にとらをうちにゆく必要もなければ長橋にりゅうをほふりにゆく必要もない、第一の害はおれだ、おれを改めて父を改める、それでいいのだ」
かれは立って室《へや》を一周した、得《え》もいえぬ勇気は全身にみなぎって歓喜の声をあげて高く叫びたくなった。
かれは窓を開いて外を見やった、すずしい風が庭の若葉をふいてすだれがさらさらと動いた、木々の緑はめざめるようにあざやかである。
「豆腐《とうふ》イ……」
らっぱの音と交代にチビ公の声が聞こえる。
「チビ公だ」かれは伸びあがってへいの外を見やった。
「とうふ[#「とうふ」に傍点]い――」
暑い日光をものともせず、大きなおけをにのうてゆくチビ公のすげ笠
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