い》の事を報ぜんには、両親とても直ちに結婚発表を迫らるべし、発表は容易なれども、自分の位地として、又|御身《おんみ》の位地として相当の準備なくては叶《かな》はず、第一病婦の始末だに、尚《なほ》付《つ》きがたき今日の場合、如何《いかん》ともせんやうなきを察し給へ。目下弁護事務にて頗《すこぶ》る有望の事件を担当し居り、此《この》事件にして成就《じやうじゆ》せば、数万《すまん》の報酬《はうしう》を得んこと容易なれば、其上《そのうへ》にて総《すべ》て花々しく処断すべし、何卒《なにとぞ》暫しの苦悶を忍びて、胎児を大切に注意し呉れよと他事《たじ》もなき頼みなり。素《もと》より彼を信ずればこそ此《この》百年の生命をも任《まか》したるなれ、斯《か》くまで事を分けられて、尚《な》ほしも※[#「研のつくり」、第3水準1−84−17]《そ》は偽りならん、一時《いちじ》遁《のが》れの間に合せならんなど、疑ふべき妾《せふ》にはあらず、他日両親の憤《いきどほ》りを受くるとも、言ひ解《と》く術《すべ》のなからんやと、事に托して叔母なる人の上京を乞ひ、事情を打明《うちあ》けて一身《いつしん》の始末を托し、只管《ひたす
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