人の団結を謀《はか》り、しばしば志士|論客《ろんかく》を請《しょう》じては天賦《てんぷ》人権自由平等の説を聴き、おさおさ女子古来の陋習《ろうしゅう》を破らん事を務めしに、風潮の向かう所入会者引きも切らず、会はいよいよ盛大に赴《おもむ》きぬ。

 五 納涼会

 同じ年の夏、自由党員の納涼会を朝日川に催すこととなり、女子懇親会にも同遊を交渉し来《きた》りければ、元老女史竹内、津下《つげ》の両女史と謀《はか》りてこれに応じ、同日夕刻より船を朝日川に泛《うか》ぶ。会員楽器に和して、自由の歌を合奏す、悲壮の音《おん》水を渡りて、無限の感に打たれしことの今もなおこの記憶に残れるよ。折しも向かいの船に声こそあれ、白由党員の一人《いちにん》、甲板《かんぱん》の上に立ち上りて演説をなせるなり。殺気|凜烈《りんれつ》人をして慄然《りつぜん》たらしむ。市中ならんには警察官の中止解散を受くる際《きわ》ならんに、水上これ無政府の心|易《やす》さは何人《なんびと》の妨害もなくて、興《きょう》に乗ずる演説の続々として試みられ、悲壮激越の感、今や朝日川を領せるこの時、突然として水中に人あり、海坊主の如く現われて、会
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