たま》の醜《みにく》さは人に見らるるも恥かしき思いなりしが、後《あと》にて聞けば妾《しょう》の親愛なる富井於菟《とみいおと》女史は、この時|娑婆《しゃば》にありて妾と同病に罹《かか》り、薬石効《やくせきこう》なく遂《つい》に冥府《めいふ》の人となりけるなり。さても頼みがたきは人の生命《いのち》かな、女史は妾らの入獄せしより、ひたすら謹慎《きんしん》の意を表し、耶蘇《ヤソ》教に入りて、伝道師たるべく、大いに聖書を研究し居たりしなるに、迷心執着の妾は活《い》きて、信念堅固の女史は逝《ゆ》きぬ。逝ける女史を不幸とすべきか、生ける妾を幸《こう》というべきか、この報を聞きたる時、妾は実に無限の感に打たれにき。
六 生理上の一変象
ここにまた一つ記《しる》し付くべき事あり。かかる事は仮令《たとえ》真実なりとも、忌《い》むべく憚《はばか》るべきこととして、大方の人の黙して止《や》むべき所なるべけれど、一つは生理学および生理と心理との関係を究《きわ》むる人々のために、一つは当時の妾が、女とよりはむしろ男らしかりしことの証《あか》しにもならんかとて、敢《あ》えて身の羞恥《はじ》をば打ち明くるなり
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