うに慣れたる看守どもの、一図《いちず》に何か誤解せる有様にて、妾の言葉には耳だも仮《か》さず、いよいよ嘲《あざけ》り気味《ぎみ》に打ち笑いつつ立ち去りたれば、妾は署長の巡廻を待って、具《つぶさ》にこの状を語り妾の罪を確かめんと思いおりしに、彼女も他《た》の監房に転じたる悲しさに、慎《つつし》み深き日頃のたしなみをも忘れて、看守の影の遠ざかれるごとに、先生先生|何故《なにゆえ》にかく離隔《りかく》せられしにや、何とぞ早くその故を質《ただ》して始めの如く同室に入らしめよと、打ち喞《かこ》つに、素《もと》より署長の巡廻だにあらば、直ちに愁訴《しゅうそ》して、互いの志を達すべし、暫《しばら》く忍びがたきを忍べかしなど慰めたることの幾度《いくたび》なりしか。
六 直訴
囚人より署長に直訴するは、ほとんど破格の事として許しがたき無礼の振舞に算《かぞ》えらるる由《よし》なるも、妾《しょう》は少しもその事を知らず、ある日巡廻し来れる署長を呼び止めしに、署長も意外の感ありしものの如くなりしが、他《た》の罪人と同一ならぬ理由を以て妾の直訴を聞き取り、更に意外の感ありし様子にて、彼女をも訊問の上、黙
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