が、いと気の毒がり、女なればとて特《こと》に拘留所を設け、其処《そこ》に入れて懇《ねんご》ろに介抱《かいほう》しくれたり。当所に来りてよりは、長崎なる拘留所の、いと凄《すさ》まじかりしに引き換え、総《すべ》てわが家の座敷牢などに入れられしほどの待遇にて、この両人の内、代る代る護衛しながら常に妾と雑話をなし、また食事の折々は暖かき料理をこしらえては妾に侑《すす》める抔《など》、万《よろず》に親切なりけるが、約二週間を経て中の島監獄へ送られし後《のち》も国事犯者を以て遇せられ、その待遇長崎の厳酷《げんこく》なりし比に非ず。長崎警察署の不仁《ふじん》なる、人を視《み》る事|宛然《さながら》犬猫なりしかば、一時は非常に憤慨せしも昔《むかし》徳川幕府が維新の鴻業《こうぎょう》に与《あずか》りて力ある志士を虐待《ぎゃくたい》せし例を思い浮べ、深く思い諦《あきら》めたりしが、今大阪にては、有繋《さすが》に通常罪人を以て遇せず言葉も丁寧《ていねい》に監守長の如きも時々見廻りて、特《こと》に談話をなすを喜び、中には用もなきに話しかけては、ひたすら妾の意を迎えんとせし看守もありけり。

 四 眉目《みめ》
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