《おんがん》俄《にわか》に厳《いか》めしうなりて、この者をも拘引《こういん》せよと犇《ひしめ》くに、巡査は承りてともかくも警察に来るべし、寒くなきよう支度《したく》せよなどなお情けらしう注意するなりき。抗《あらが》うべき術《すべ》もなくて、言わるるままに持ち合せの衣類取り出し、あるほどの者を巻きつくれば、身はごろごろと芋虫《いもむし》の如くになりて、頓《やが》て巡査に伴《ともな》われ行く途上《みち》の歩みの息苦しかりしよ。警察署に着くや否や、先ず国事|探偵《たんてい》より種々の質問を受けしが、その口振りによりて昼のほど公園に遊び帰途|勧工場《かんこうば》に立ち寄りて筆紙墨《ひっしぼく》を買いたりし事まで既に残りのう探り尽されたるを知り、従ってわれらがなお安全と夢みたりしその前々日より大事は早くも破れ居たりしことを覚《さと》りぬ。
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   第四 未決監


 一 ほとんど窒息《ちっそく》

 訊問《じんもん》卒《お》えて後《のち》、拘留所に留置せられしが、その監倉《かんそう》こそは、実に演劇にて見たりし牢屋《ろうや》の体《てい》にて、妾《しょう》の入牢せしはあたかも午前三
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