》らして我らの行を妨《さまた》げ、あわよくば縛《ばく》に就かしめんと謀《はか》りしには非《あら》ざる乎《か》と種々評議を凝《こら》せしかど、終《つい》に要領を得ず、東京に打電して重井《おもい》に質《ただ》さんか、出船の期の迫りし今日そもまた真意を知りがたからん、とかくは打ち棄てて顧みず、向かうべき方《かた》に進まんのみと、古井より他《た》の壮士にこの旨《むね》を伝えしに、彼らの中《うち》には古井が磯山に代りしを忌《い》むの風《ふう》ありて議|諧《かな》わず、やや不調和の気味ありければ、かかる人々は潔《いさぎよ》く帰東せしむべし、何ぞ多人数《たにんず》を要せん、われは万人に敵する利器を有せり、敢えて男子に譲らんやと、古井に同意を表して稲垣をば東京に帰らしめ、決死の壮士十数名を率《ひき》いて渡韓する事に決しぬ。これにて妾も心安く、一日長崎の公園に遊びて有名なる丸山など見物し、帰途|勧工場《かんこうば》に入りて筆紙墨《ひっしぼく》を買い調《ととの》え、薄暮《はくぼ》旅宿に帰りけるに、稲垣はあらずして、古井|独《ひと》り何か憂悶《ゆうもん》の体《てい》なりしが、妾の帰れるを見て、共に晩餐を喫《
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