《ほうそう》にかかり、一週間前に世を去りぬ、今日《こんにち》はその一七日《ひとなのか》なれば線香なりと手向《たむ》けやらんと、その病《やまい》の伝染して顔もまだこの通りの様《さま》ながら紙屑《かみくず》拾いに出《い》でたるに、病後の身の遠くへは得《え》も行かれず、籠《かご》の物も殖《ふ》えざれば、これでは線香どころか、一度の食事さえ覚束《おぼつか》なしと、悶《もだ》え苦しみつつふと見れば、人気《ひとけ》なき処に着物|乾《ほ》したる家あり。背に腹は換《か》えられず、つい道ならぬ欲に迷いしために、忽《たちま》ち覿面《てきめん》の天罰《てんばつ》受けて、かくも見苦しき有様となり、御目《おんめ》にかかりしことの恥かしさよと、生体《しょうたい》なきまで泣き沈み、御恵《おんめぐ》みに与《あずか》りし時は、病床《びょうしょう》にありし良人《おっと》へも委細を語りて、これも天の御加護《おかご》ならんと、薬も買いぬ、小供に菓子も買《こ》うて遣《や》りぬ、親子三人久し振りにて笑い顔をも見せ合いしに、良人の病《やまい》はなお重《おも》り行きて、敢《あ》えなき最期《さいご》、弱る心を励《はげ》まして、私は小供
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