終りしとぞ。
四 磯山の失踪《しっそう》
それより数日《すじつ》にして爆発物も出来上りたり、いよいよ出立という前の日、磯山の所在分らずなりぬ。しかるにその甥《おい》なる田崎某《たざきぼう》妾に向かいて、ある遊廓に潜《ひそ》めるよし告げければ、妾先ず行きて磯山の在否を問いしに、待合《まちあい》の女将《おかみ》出《い》で来りて、あらずと弁ず。好《よ》し他《た》の人にはさも答えよ、妾は磯山が股肱《ここう》の者なり、この家に磯山のあるを知り、急用ありて来れるものを、磯山にして妾と知らば、必ず匿《かく》れざるべしと重《かさ》ねて述べしに、女将|首肯《うなず》きて、「それは誠にすみまへんが、何誰《どなた》がおいでやしても、おらんさかいにと、いやはれと、おいやしたさかい、おかくしもうし、たんだすさかい、ごめんやす、あんたはんは女《おなご》はんじゃ、さかい、おこりはりゃ、しまへんじゃろ」とて、妾を奥の奥のずーッと奥の愛妓《あいぎ》|八重《やえ》と差し向かえる魔室に導《みちび》きぬ。彼は素《もと》より女将《おかみ》に厳命せし事のかくも容易《たや》すく破れんとは知るよしもなく、人のけはいをばただ女
前へ
次へ
全171ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福田 英子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング