の外《ほか》はなかりき。さるにても、同志は如何様《いかよう》の余裕ありて、かくは豪奢《ごうしゃ》を尽すにかあらん、ここぞ詰問《きつもん》の試みどころと、葉石氏に向かい今日《こんにち》の宴会は妾ほとほとその心を得ず、磯山氏よりの急使を受けて、定めて重要事件の打ち合せなるべしと思い測《ほか》れるには似もやらず、痴呆《たわけ》の振舞、目にするだに汚《けが》らわし、アア日頃頼みをかけし人々さえかくの如し、他の血気の壮士らが、遊廓通《ゆうかくがよ》いの外《ほか》に余念なきこそ道理なれ、さりとては歎《なげ》かわしさの極《きわ》みなるかな。かかる席に列《つら》なりては、口利《くちき》くだに慚《は》ずかしきものを、いざさらば帰るべしとて、思うままに言い罵《ののし》り、やおら畳《たたみ》を蹶立《けた》てて帰り去りぬ。こはかかる有様を見せしめなば妾の所感|如何《いかが》あらんとて、磯山が好奇《ものずき》にも特《こと》に妾を呼びしなりしに、妾の怒り思いの外《ほか》なりしかば、同志はいうも更《さら》なり、絃妓《げんぎ》らまでも、衷心《ちゅうしん》大いに愧《は》ずる所あり、一座|白《しら》け渡りて、そこそこ宴を
前へ 次へ
全171ページ中47ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
福田 英子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング