「警察」は底本では「驚察」]に告訴して有志の士を傷《きず》つけんとは、何たる怖ろしき人非人《にんぴにん》ぞ、もはや人道の大義を説くの必要なし、ただ一死以て諸氏に謝する而已《のみ》と覚悟しつつ、兄に向かいてかばかりの大事に与《くみ》せしは全く妾の心得違いなりき、今こそ御諭《おんさとし》によりて悔悟《かいご》したれ、以後は仰《おお》せのままに従うべければ、何とぞ誓いし諸氏の面目を立てしめ給え、と種々に哀願して僅かにその承諾は得てしかど、妾はそれより二階の一室に閉《と》じ籠《こ》めの身となり、妹は看守の役を仰せ付かりつ。筆も紙も与えられねば書を読むさえも許されず、その悲しさは死にも優《まさ》りて、御身《おんみ》のさぞや待ちつらんと思う心は、なかなか待つ身に幾倍の苦しさなりけん。漸《ようよ》う妹を賺《すか》して、鉛筆と半紙を借り受け急ぎ消息はなしけるも、委《くわ》しき有様を書き記《しる》すべき暇《ひま》もなかりき。定めて心変りよと爪弾《つまはじ》きせらるるならんと口惜《くちお》しさ悲しさに胸は張り裂《さ》くる思いにて、夜《よ》もおちおち眠られず。何とぞして今一度東上し、この胸の苦痛を語りて徐《
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