》れたる浴衣《ゆかた》を着して、妙齢の処女のさすがに人目|羞《はず》かしげなる風情《ふぜい》にて、茫然《ぼうぜん》と庭に佇《たたず》めるなりけり。さてあるべきに非《あら》ざれば、二階に扶《たす》け上《あ》げて先ず無事を祝し、別れし後《のち》の事ども何くれと尋《たず》ねしに、女史は涙ながらに語り出づるよう、御身《おんみ》に別れてより、無事郷里に着き、母上|兄妹《けいまい》の恙《つつが》なきを喜びて、さて時ならぬ帰省の理由かくかくと述べけるに、兄は最《い》と感じ入りたる体《てい》にて始終耳を傾け居たり。その様子に胸先ず安く、遂《つい》に調金の事を申し出でしに、図《はか》らざりき感嘆の体と見えしは妾《しょう》の胆太《きもふと》さを呆《あき》れたる顔ならんとは。妾の再び三たび頼み聞えしには答えずして、徐《しず》かに沈みたる底《そこ》気味わるき調子もて、かかる大《だい》それたる事に加担する上は、当地の警察署に告訴して大難を未萌《みほう》に防《ふせ》がずばなるまじという。妾は驚きつつまた腹立たしさの遣《や》る瀬《せ》なく、骨肉の兄と思えばこそかく大事を打ち明けしなるに、卑怯《ひきょう》にも警察[#
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