《あいだがら》たるも、決して、人の意を枉《ま》げしめて、己《おの》れの説に服従せしむるは、我の好まざる所、いわんやわれわれ計画する処の事は、皆身命に関する事なるにおいてをや、われは意気相投ずるを待って、初めて満腔《まんこう》の思想を、陳述する者なりと、何事においても、総《すべ》てかくの如くなりし。しかるに、忽《たちま》ち朝鮮一件より日清の関係となるや、儂《のう》は曩日《さき》に述べし如く、我が国の安危《あんき》旦夕《たんせき》に迫れり、豈《あに》読書の時ならんやと、奮然書を擲《なげう》ち、先ず小林の処に至り、この際|如何《いかん》の計画あるやを問う。しかれども答えず。因って儂は、あるいは書にし、あるいは百方|言《げん》を尽して、数※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》その心事を陳述せしゆえ、やや感ずる所ありけん、漸《ようや》く、今回事件の計画中、その端緒《たんちょ》を聞くを得たり。その端緒とは他に非ず、即ち今回日清争端を開かば、この挙に乗じ、平常の素志《そし》を果さん心意なり。しかして、その計画は既に成りたりといえども、一金額の乏しきを憂うる而已《のみ》との言に儂《のう》は大いに感
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