れつ》の思い、愛国の情、転《うた》た切なるを覚ゆ。ああ日本に義士なき乎《か》、ああこの国辱を雪《そそ》がんと欲するの烈士、三千七百万中|一人《いちにん》も非ざる乎、条約改正なき、また宜《むべ》なる哉《かな》と、内を思い、外《ほか》を想うて、悲哀|転輾《てんてん》、懊悩《おうのう》に堪《た》えず。ああ如何《いかん》して可ならん、仮令《たとい》女子たりといえども、固《もと》より日本人民なり、この国辱を雪がずんばあるべからずと、独《ひと》り愁然《しゅうぜん》、苦悶に沈みたりき。何《なん》となれば、他に謀《はか》るの女子なく、かつ小林等は、この際何か計画する様子なるも、儂は出京中他に志望する所ありて、暫《しばら》く一心に英学に従事し居たりしを以て、かつて小林とは互いに主義上、相敬愛せるにもかかわらず、儂《のう》は修業中なるを以て、小林の寓所《ぐうしょ》を訪《と》う事も甚《はなは》だ稀《まれ》なりしを以て、その計画する事件も、求めてその頃は聞かざりしが、儂は日清談判の時に至り、大いに感ずる所あり、奮然書を擲《なげう》ちたり。また小林は予《かね》ての持論に、仮令《たとい》如何《いか》に親密なる間柄
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