めに如何《いか》なる弊制悪法あるも恬《てん》として意に介せず、一身の小楽に安んじ錦衣《きんい》玉食《ぎょくしょく》するを以て、人生最大の幸福名誉となす而已《のみ》、豈《あに》事体の何物たるを知らんや、いわんや邦家《ほうか》の休戚《きゅうせき》をや。いまだかつて念頭に懸《か》けざるは、滔々《とうとう》たる日本婦女皆これにして、あたかも度外物《どがいぶつ》の如く自ら卑屈し、政事に関する事は女子の知らざる事となし一《いつ》も顧慮するの意なし。かく婦女の無気無力なるも、偏《ひとえ》に女子教育の不完全、かつ民権の拡張せざるより自然女子にも関係を及ぼす故なれば、儂《のう》は同情同感の民権拡張家と相結托し、いよいよ自由民権を拡張する事に従事せんと決意せり、これ固《もと》より儂が希望目的にして、女権拡張し男女同等の地位に至れば、三千七百万の同胞姉妹皆|競《きそ》いて国政に参し、決して国の危急を余所《よそ》に見るなく、己《おの》れのために設けたる弊制悪法を除去し、男子と共に文化を誘《いざな》い、能《よ》く事体に通ずる時は、愛国の情も、いよいよ切《せつ》なるに至らんと欲すればなり。しかるに現今我が国の状態
前へ 次へ
全171ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
福田 英子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング