粗悪なるとは、けだしその主なるものなるべきなり。しかしてその不斉一その粗悪なるは、その製出者と営業者とに徳義心を欠くが故なりというも可《か》なり、鑑《かんが》みざるべけんや。
そもそも文明の進み分業の行わるるに従い、機械的|大仕掛《おおじかけ》の製造盛んに行われ、低廉《ていれん》なる価格を以て、能《よ》く人々の要に応じ得べきに至るといえども、元来機械製造のものたる、千篇一律《せんぺんいちりつ》風致《ふうち》なく神韻《しんいん》を欠くを以て、単《ひとえ》に実用に供するに止《とど》まり、美術品として愛翫《あいがん》措《お》く能《あた》わざらしむる事なし。しかるに経済社会の進捗《しんちょく》し富財《ふざい》の饒多《じょうた》となるに従って、昨日の贅沢品《ぜいたくひん》も今日《こんにち》は実用品と化し去り、贅沢品として愛翫せらるるものは、勢い手工《しゅこう》の妙技を逞《たくま》しうせる天真爛漫《てんしんらんまん》たるものに外《ほか》ならざるに至るなり、故を以て衣食住の程度低き我が国において、我が国産たる絹布を用い、これに加うるに手工|細技《さいぎ》に天稟《てんりん》の妙を有する我が国女工を以て
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