訣《わか》るることあるも、独立の生計を営みて、毅然《きぜん》その操節を清《きよ》うするもの、その平生《へいぜい》涵養《かんよう》停蓄《ていちく》する所の智識と精神とに因《よ》るべきは勿論《もちろん》なれども、妾らを以てこれを考うれば、むしろ飢寒《きかん》困窮《こんきゅう》のその身を襲《おそ》うなく、艱難辛苦《かんなんしんく》のその心を痛むるなく、泰然《たいぜん》としてその境に安んずることを得るがためならずんばあらざるなり。
しかりといえども女子に適切なる職業に至りてはその数極めて少なし、やや望みを嘱《しょく》すべきものは絹手巾《きぬはんけち》の刺繍《ししゅう》これなり。絹手巾はその輸出かつて隆盛を極め、その年額百万|打《ダース》その原価ほとんど三百余万円に上《のぼ》り我が国産中実に重要の地位を占めたる者なりき。しかるにその後《のち》の趨勢《すうせい》は頓《とみ》に一変して貿易市場における信用全く地に落ち、輸出高|益※[#二の字点、1−2−22]《ますます》減退するの悲況を呈するに至れり。これ固《も》と種々なる原因の存するものなるべしといえども、製作品の不斉一《ふせいいつ》なると、品質の
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