らつか》辺に静養せしむべしと、その用意おさおさ怠《おこた》りなかりしに、積年の病|終《つい》に医する能《あた》わず、末子《ばっし》千秋《ちあき》の出生《しゅっしょう》と同時に、人事不省に陥《おちい》りて終に起《た》たず、三十六歳を一期《いちご》として、そのまま永《なが》の別れとなりぬ。
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  第十四 大覚悟


 アア人生の悲しみは最愛の良人に先立たるるより甚《はなは》だしきはなかるべし。妾《しょう》も一旦《いったん》は悲痛の余り墨染《すみぞめ》の衣《ころも》をも着けんかと思いしかど、福田実家の冷酷なる、亡夫の存生中より、既にその意の得ざる処置多く、病中の費用を調《ととの》うるを名として、別家《べっけ》の際、分与《ぶんよ》したる田畑をば親族の名に書き換え、即ちこれに売り渡したる体《てい》に持て做《な》して、その実は再び本家《ほんけ》の有《ゆう》となしたるなど、少しも油断なりがたく、彼の死後は殊更《ことさら》遺族の饑餓《きが》をも顧《かえり》みず、一列《いっさい》投げやりの有様なれば、今は子らに対して独《ひと》り重任を負える身の、自ら世を捨て、呑気《のんき》の生涯を送るべ
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