》侯爵《こうしゃく》もまた勅《ちょく》を帯びて渡韓したりき。故に福田はこれらの人によりてかの国有志の重立《おもだ》ちたる人々に交わりを求むるも難《かた》からず、またかの国法務大臣|徐洪範《じょこうはん》は、かつて米国遊学中の同窓の友なれば重ね重ね便宜ありと勇みすすみて、いよいよ出立《しゅったつ》の日妾に向かい、内地にては常に郷里のために目的を妨《さまた》げられ、万事に失敗して御身《おんみ》にまで非常の心痛をかけたりしが、今回の行《こう》によりて、聊《いささ》かそを償《つぐな》い得べし。御身に病児を托す、願わくは珍重《ちんちょう》にせよかしとて、決然|袂《たもと》を分《わか》ちしに、その後《のち》二週間ばかりにして、またもや彼が頭上に一大災厄の起らんとは、実《げ》にも悲しき運命なるかな。

 七 妨害運動

 これより先、郷里の両親らは福田が渡韓の事を聞きて彼を郷里に呼び返すことのいよいよ難《かた》きを憂《うれ》い、その極|高利貸《こうりかし》をして、福田が家資分産《かしぶんさん》の訴えを起さしめ、かくして彼の一身《いっしん》を縛《しば》り、また公権をさえ褫奪《ちだつ》して彼をして官途に
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