か、御身《おんみ》の言葉|違《たが》えり、仮令《たとえ》ばその日暮《ひぐら》しのいと便《びん》なきものなりとも、一家|団欒《だんらん》の楽しみあらば、人の世に取りて如何《いか》ばかりか幸福ならん。素《も》と自分の洋行せしは、親より強《し》いて従妹なる者と結婚せしめられ、初めより一毫《いちごう》の愛とてもなきものを、さりとは押し付けの至りなるが腹立たしく、自暴《やけ》より思い付ける遊学なりき。されば両親も自ら覚《さと》る所ありてか遊学中も学資を送り来りて、七年の修業を積むことを得《え》、先に帰朝の後は自分の理想を家庭に施す事を得んと楽しみたりしに、志《こころざし》はまた事と違いて、昔に優《まさ》る両親の処置の情《なさ》けなさ、かかる家庭にあるも心苦しくて他出《たしゅつ》することの数※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》なりしにつれて、覚えずも魔の道に踏み迷い、借財山の如くになりて遂《つい》に父上の怒りに触れ、かかる放蕩《ほうとう》者の行末《ゆくすえ》ぞ覚束《おぼつか》なき、勘当せんと敦圉《いきま》き給えるよし聞きたれば、心ならずも再びかの国に渡航して身を終らんと覚悟せるなりと物語る。
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