とたび》交誼《こうぎ》を結ばんとの念はありしなるべし。ある日|関東倶楽部《かんとうくらぶ》に一友人を尋《たず》ねし時、一紳士《いつしんし》の微笑しつつ、好処《よいところ》にてお目にかかれり、是非お宅へ御尋ね申したき事ありというを冒頭に、妾の方《ほう》に近づき来りて、慇懃《いんぎん》に挨拶せるは福田なり。そは如何《いか》なる御用にやと問い反《かえ》せしに、彼は妾の学校の当時なお存しおる者と思い居たるが如く、今回郷里なる親戚の小供の出京するにつきては、是非とも御依頼せんと思うなりという。依って妾は目下都合ありて閉校せることを告げ、尤《もっと》も表面学校生活はなしおらざるも、両三人自宅に同居して読書習字の手ほどきをなしおれり、それにて差し支えなくば御越《おんこ》しなさるるも宜《よろ》しけれど、実の処、一方《ひとかた》ならぬ困窮に陥《おちい》りて学校らしき体面をすら装う能《あた》わずと話しけるに、彼は何事にか大いに感じたる体《てい》なりしも道理、その際彼も米国より帰朝以来、小石川《こいしかわ》竹早町《たけはやちょう》なる同人社《どうにんしゃ》の講師として頗《すこぶ》る尽瘁《じんすい》する所あり
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