の内に三度まで葬儀を営める事とて、本来|貧窮《ひんきゅう》の家計は、ほとほと詮《せん》術《すべ》もなき悲惨の淵《ふち》に沈みたりしを、有志者諸氏の好意によりて、辛《から》くも持ち支え再び開校の準備は成りけれども、杖柱《つえはしら》とも頼みたる父上兄上には別れ、嫂《あによめ》は子供を残して実家に帰れるなどの事情によりて、容易に授業を始むべくもあらず、一家再び倒産の憐《あわ》れを告げければ、妾は身の不幸不運を悔《くや》むより外《ほか》の涙もなく、この上は海外にも赴《おもむ》きてこの志《こころざし》を貫《つらぬ》かんと思い立ち、徐《おもむ》ろに不在中の家族に対する方法を講じつつありし時よ、天いまだ妾を捨て給わざりけん端《はし》なくも後日《こじつ》妾の敬愛せる福田友作《ふくだともさく》と邂逅《かいこう》の機を与え給えり。
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  第十三 良人


 一 同情相憐れむ

 これより先、明治二十三年の春、新井章吾《あらいしょうご》氏の宅にて、一度福田と面会せし事はありしが、当時|妾《しょう》は重井との関係ありし頃にて、福田の事は別に記憶にも存せざりしが、彼は妾の身の上を知り、一度《ひ
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