他の演説あり。妾にも一場《いちじょう》の演説をとの勧め否《いな》みがたく、ともかくもして責《せ》めを塞《ふさ》ぎ、更に婦人の設立にかかる婦人|矯風会《きょうふうかい》に臨みて再び拙《つたな》き談話を試み、一同と共に撮影しおわりて、前川虎造氏の誘引《ゆういん》により和歌《わか》の浦《うら》を見物し、翌日は田辺《たなべ》という所にて、またも演説会の催しあり、有志者の歓迎と厚き待遇とを受けて大いに面目を施《ほどこ》したりき。かく重井と共に諸所に遊説しおる内に、わが郷里附近よりも数※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》招待を受けたり。この時世間にては、妾と葉石との間に結婚の約の継続しおることを信じ居たれば、葉石との同行誠に心苦しかりけれど、既に重井と諸所を遊説せし身の特《こと》に葉石との同行を辞《いな》まんようなく、かつは旧誼上《きゅうぎじょう》何となく不人情のように思われければ、重井の東京に帰るを機として妾も一旦《いったん》帰郷し、暫《しば》し当所の慰労会懇親会に臨みたり。とかくして滞在中|川上音二郎《かわかみおとじろう》の一行《いっこう》、岡山市|柳川座《やながわざ》に乗り込み、大阪事
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