き》の体にて容《かたち》を改め、貴嬢願わくはこの書を一覧あれとの事に、何心《なにごころ》なく披《ひら》き見れば、思いもよらぬ結婚申し込みの書なりけり。その文に曰《いわ》く(中略)貴嬢の朝鮮事件に与《くみ》して一死を擲《なげう》たんとせるの心意を察するに、葉石との交情旧の如くならず、他に婚を求むるも容貌《ようぼう》醜矮《しゅうわい》突額《とつがく》短鼻《たんび》一目《いちもく》鬼女《きじょ》怪物《かいぶつ》と異《こと》ならねば、この際身を棄《す》つる方|優《まさ》るらんと覚悟し、かくも決死の壮挙を企てたるなり。可憐《かれん》の嬢が成行きかな。我不幸にして先妻は姦夫《かんぷ》と奔《はし》り、孤独の身なり、かかる醜婦と結婚せば、かかる悲哀に沈む事なく、家庭も睦《むつ》まじく神に仕えらるるならんと云々《うんぬん》。かく読み終れる妾の顔に包むとすれど不快の色や見えたりけん、客はいとど面目なき体にて、アア誤《あやま》てり疎忽《そこつ》千万《せんばん》なりき。ただ貴嬢の振舞を聞きて、直ちに醜婦と思い取れる事の恥かしさよ。わが想像の仇《あだ》となれるを思うに、凡《およ》そ貴嬢を知るほどの者は必ず貴嬢を
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