天の女性に賜わりし特色をもて些《いささ》かなりとも世に尽さん考えなりしに、図《はか》らずも殺風景の事件に与《くみ》したればこそ、かかる誤認をも招きたるならめ。さきに男のすなる事にも関《かかずら》いしは事《こと》国家の休戚《きゅうせき》に関し、女子たりとも袖手《しゅうしゅ》傍観すべきに非《あら》ず、もし幸いにして、妾にも女の通性とする優しき情と愛とあらば、これを以て有為の士を奨《すす》め励《はげ》まし、及ばずながら常に男子に後援たらんとせしに外《ほか》ならず、かの男子と共に力を争い、将《は》た功を闘わさんなどは妾の思いも寄らぬ所なり。女は何処《どこ》までも女たれ男は何処までも男たれ、かくて両性互いに相輔《あいたす》け相補うてこそ始めて男女の要はあれと確信せるものなるに、図《はか》らずもかかる錯誤《さくご》を招きたるは、妾の甚《はなは》だ悲しむ所、はた甚だ快しとせざる所なるをもて、妾は女生に向かいて諄々《じゅんじゅん》その非を諭《さと》し、やがて髪を延ばさせ、着物をも女の物に換えしめけるに、あわれ眉目《びもく》艶麗《えんれい》の一美人と生れ変りて、ほどなく郷里に帰り、他に嫁《か》して美しき
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