》なり行きぬ。
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第十 閑話三則
一 一女生
その頃|妾《しょう》の召し連れし一女生あり。越後の生れにて、あたかも妙齢十七の処女なるにも似ず、何故か髪を断《き》りて男の姿を学び、白金巾《しろかなきん》の兵児帯《へこおび》太く巻きつけて、一見《いっけん》田舎の百姓息子の如く扮装《いでた》ちたるが、重井を頼りて上京し、是非とも景山《かげやま》の弟子にならんとの願いなれば、書生として使いくれよとの重井の頼み辞《いな》みがたく、先ずその旨《むね》を承諾して、さて何故にかかる変性男子《へんしょうだんし》の真似をなすにやと詰《なじ》りたるに、貴女《あなた》は男の如き気性《きしょう》なりと聞く、さらばかくの如き姿にて行かざらんには、必ずお気に入るまじと確信し、ことさらに長き黒髪を切り捨て、男の着る着物に換《か》えたりという。さては世間の妾を視《み》ること、かくまでに誤れるにや、それとも心付かずしてあくまでも男子を凌《しの》がんとする驕慢《きょうまん》疎野《そや》の女よと指弾《つまはじ》きせらるることの面目なさよ。有体《ありてい》にいえば、妾は幼時の男装を恥じて以来、
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