贈りて一生を安からしめ、さて後に縁を絶たんといえり。さもあるべき事と思いければ、姑《しば》らく内縁を結ぶの約をなしたるなり、御意見|如何《いか》があるべきやと尋《たず》ねけるに、両親ともにあたかも妾の虚名に酔える時なりしかば、ともかくも御身《おんみ》の意見に任すべしと諾《うべな》われなお重井にして当地に来りなば、宅に招待して親戚にも面会させ、その他の兄弟とも余所《よそ》ながらの杯《さかずき》させん抔《など》、なかなかに勇み立たれければ、妾も安心して、大阪なる友人を訪《と》うを名とし重井に面して両親の意向を告げしに、その喜び一方《ひとかた》ならず、この上は直ちに御両親に見《まみ》えんとて、相挈《あいたずさ》えて岡山に来り、我が家の招待に応じて両親らとも妾の身の上を語り定めたる後《のち》、貴重なる指環《ゆびわ》をば親しく妾の指に嵌《は》めて立ち帰りしこそ、残る方《かた》なき扱いなれとて、妾は素《もと》より両親も頗《すこぶ》る満足の体《てい》に見受けられき。爾来《じらい》東京に大阪に将《は》た神戸に、妾は表面同志として重井と相伴い、演説会に懇親会に姿を並べつ、その交情日と共にいよいよ重《かさ
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