。
この公園は旧三十五万石を領せる池田侯爵の後園《こうえん》にして、四時の眺《なが》め尽せぬ日本三公園の一なり。宴の発企《ほっき》者は岡山屈指の富豪野崎氏その他知名の諸氏にしてわれわれおよび父母親戚を招待せられ、席上諸氏の演説あり、また有名の楽師を招きて、「自由の歌」と題せる慷慨《こうがい》悲壮の新体詩をば、二面の洋琴《ようきん》に和して歌わしむ。これを聴ける時、妾は思わず手を扼《やく》して、アアこの自由のためならば、死するもなどか惜しまんなど、無量の感に撃《う》たれたり。唱歌終りて葉石の答礼あり、それより酒宴は開かれ、各※[#二の字点、1−2−22]《おのおの》歓を尽して帰路につきたるは、頓《やが》て点燈頃《ひともしごろ》なりき。
三 久し振りの帰郷
かくて妾《しょう》は母、兄弟らに護られつつ、絶えて久しき故郷の家に帰る。想えばここを去りし時の淋《さび》しく悲しかりしに引き換えて、今は多くの人々に附き纏《まと》われ、賑々《にぎにぎ》しくも帰れることよ。今昔《こんじゃく》の感|坐《そぞ》ろに湧《わ》きて、幼児の時や、友達の事など夢の如く幻《まぼろし》の如く、はては走馬燈《まわ
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