りあんどん》の如くにぞ胸に往《ゆ》き来《こ》う。我が家に近き町はずれよりは、軒《のき》ごとに紅燈《こうとう》の影美しく飾られて宛然《さながら》敷地祭礼の如くなり。これはた誰《たれ》がための催しぞと思うに、穴にも入りたき心地ぞする、死したらんにはなかなか心易かるべしとも思いぬ。アアかかる款待《かんたい》を受けながら、妾が将来は如何《いか》に、重井《おもい》と私《ひそ》かに結婚を約せるならずや、そも妾は如何にしてこの厚意に報いんとはすらんなど、人知れず悶《もだ》え苦しみしぞかし。

 四 大評判

 我が家にては親戚故旧を招きて一大盛宴を張りぬ。絃妓《げんぎ》も来り、舞子も来りて、一家狂するばかりなり。宴終りて後《のち》、種々しめやかなる話しも出で、暁《あかつき》に至りて興はなお尽きざりき。七年の来《こ》し方《かた》を、一夜に語り一夜に聴かんと※[#「二点しんにょう+(山/而)」、第4水準2−89−92]《はや》れるなるべし。
 明《あ》くれば郷里の有志者および新聞記者諸氏の発起《ほっき》にかかる慰労会あり、魚久《うおきゅう》という料理店に招かれて、朝鮮鶴の料理あり、妾らの関係せしかの事件
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