中江兆民《なかえちょうみん》先生、栗原亮一《くりはらりょういち》氏らの厚遇を受け給いぬ。夜に入りて旅館に帰り、ようよう一息《ひといき》入れんとせしに、来訪者引きも切らず、拠《よんどころ》なく一々面会して来訪の厚意を謝するなど、その忙しさ目も廻らんばかりなり。翌日は、重井《おもい》、葉石《はいし》、古井《ふるい》らの諸氏が名古屋より到着のはずなりければ、さきに着阪《ちゃくはん》せる同志と共に停車場《ステーション》まで出迎えしに、間もなく到着して妾らより贈れる花束を受け、それより徒歩して東雲《しののめ》新聞社に至らんとせるに、数万《すまん》の見物人および出迎人にて、さしもに広き梅田|停車場《ステーション》もほとんど立錐《りっすい》の地を余さず、妾らも重井、葉石らと共に一団となりて人々に擁《よう》せられ、足も地に着かずして中天にぶらさがりながら、辛《かろ》うじて東雲《しののめ》新聞社に入る。新聞社の前にも見物人山の如くなれば、戸を閉じて所要ある人のみを通す事としたるに、門外には重井万歳出獄者万歳の声引きも切らず、花火は上る剣舞は始まる、中江先生は今日は女尊男卑なり、君をば満緑《まんりょく》叢
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