ステーション》に着きけるに、出迎えの人々実に狂するばかり、我々同志の無事出獄を祝して万歳の声天地も震《ふる》うばかりなり。停車場《ステーション》に着くや否や、諸有志のわれも花束を贈らんとて互いに先を争う中に、なつかしや、七年前別れ参らせし父上が、病後衰弱の身をも厭《いと》わせられず、親類の者に扶《たす》けられつつ、ここに来り居まさんとは。オオ父上かと、人前をも恥じず涙に濡《し》める声を振り絞《しぼ》りしに、皆々さこそあらめとて、これも同情の涙に咽《むせ》ばれぬ。かくてあるべきならねば、同志の士に伴われ、父上と手を別《わか》ちて用意の整えるある場所に至り、更に志士の出獄を祝すとか、志士の出獄を歓迎すとか、種々の文字を記せる紅白の大旗《たいき》に護られ、大阪市中を腕車《わんしゃ》に乗りて引き廻されけるに、当地まで迎えに来りし父上は、妾の無事出獄の喜びと、当地市民の狂するばかりなる歓迎の有様を目撃したる無限の感とに打たれ、今日までの心配もこれにて全く忘れたり、このまま死すも残り惜しき事なし、かくまで諸氏の厚遇に預かり、市民に款待《かんたい》せられんことは、思い設けぬ所なりしといいつつも、故|
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