もなく辞職して、藤堂《とうどう》氏の老女となりぬ。今なお健在なりや否や。
六 憲法発布と大赦《たいしゃ》
それはさて置き妾《しょう》は苦役一年にして賞標《しょうひょう》四個《しこ》を与えられ、今一個を得て仮出獄の恩典あらんとせる、ある日の事、小塚義太郎《こづかぎたろう》氏大阪より来りて面会を求めらる。大阪よりと聞きて、かつは喜びかつは動悸《とき》めきながら、看守に伴われて面接所に行き見れば、小塚氏は微笑を以て妾を迎え、久々《ひさびさ》の疎音《そいん》を謝して、さていうよう、自分は今回有志者の依頼を受けて、入獄者一同を見廻りおり、今度の紀元節を以て、憲法を発布あらせらるべき詔勅《しょうちょく》下り、かつ辱《かたじけな》くも入獄者一同に恩典……といいかけしに、看守は遮《さえぎ》りてその筋よりいまだ何らの達《たっし》なし、めったな事を言うべからずと注意したり。小塚氏はなお語を継ぎて、貴女《あなた》は何にも御存知なき様子、しかし早晩御通知あらん、いずれ明日《みょうにち》にも面会に出頭せん、衣類等は如何《いか》になりおるや、早速にも間に合うよう相成りおるや否やなど、種々厚き注意をなして、
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