えばこの味わいが恋の誠と俊雄は精一杯小春をなだめ唐琴屋《からことや》二代の嫡孫色男の免許状をみずから拝受ししばらくお夏への足をぬきしが波心楼《はしんろう》の大一坐に小春お夏が婦多川《ふたがわ》の昔を今に、どうやら話せる幕があったと聞きそれもならぬとまた福よしへまぐれ込みお夏を呼べばお夏はお夏名誉|賞牌《しょうはい》をどちらへとも落しかねるを小春が見るからまたかと泣いてかかるにもうふッつりと浮気はせぬと砂糖八分の申し開き厭気《いやき》というも実は未練窓の戸開けて今鳴るは一時かと仰ぎ視《み》ればお月さまいつでも空とぼけてまんまるなり
脆《もろ》いと申せば女ほど脆いはござらぬ女を説くは知力金力権力腕力この四つを除《の》けて他に求むべき道はござらねど権力腕力は拙《つたな》い極度、成るが早いは金力と申す条まず積ってもごろうじろわれ金をもって自由を買えば彼また金をもって自由を買いたいは理の当然されば男傾城《おとこけいせい》と申すもござるなり見渡すところ知力の世界|畢竟《ひっきょう》ごまかしはそれの増長したるなれば上手にも下手にも出所《しゅっしょ》はあるべしおれが遊ぶのだと思うはまだまだ金を愛《お
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