》しむ土臭い料見あれを遊ばせてやるのだと心得れば好かれぬまでも嫌《きら》われるはずはござらぬこれすなわち女受けの秘訣《ひけつ》色師《いろし》たる者の具備すべき必要条件法制局の裁決に徴して明らかでござるとどこで聞いたか氏《うじ》も分らぬ色道じまんを俊雄は心底《しんそこ》歎服《たんぷく》し満腹し小春お夏を両手の花と絵入新聞の標題《みだし》を極め込んだれど実もってかの古大通《こだいつう》の説くがごとくんば女は端からころりころり日の下開山の栄号をかたじけのうせんこと死者《しびと》の首を斬るよりも易しと鯤《こん》、鵬《ぼう》となる大願発起痴話|熱燗《あつかん》に骨も肉も爛《ただ》れたる俊雄は相手待つ間歌川の二階からふと瞰下《みおろ》した隣の桟橋《さんばし》に歳十八ばかりの細《ほっ》そりとしたるが矢飛白《やがすり》の袖夕風に吹き靡《なび》かすを認めあれはと問えば今が若手の売出し秋子とあるをさりげなく肚《はら》にたたみすぐその翌晩月の出際《でぎわ》に隅《すみ》の武蔵野《むさしの》から名も因縁づくの秋子をまねけば小春もよしお夏もよし秋子も同じくよしあしの何はともあれおちかづきと気取って見せた盃《さかず
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