き》が毒の器たんとはいけぬ俊雄なればよいお色やと言わるるを取附きの浮世噺《うきよばなし》初の座敷はお互いの寸尺知れねば要害|厳《きび》しく、得て気の屈《つま》るものと俊雄は切り上げて帰りしがそれから後は武蔵野へ入り浸り深草ぬしこのかたの恋のお百度秋子秋子と引きつけ引き寄せここらならばと遠くお台所より伺えば御用はないとすげなく振り放しはされぬものの其角《きかく》曰《いわ》くまがれるを曲げてまがらぬ柳に受けるもやや古《ふる》なれどどうも言われぬ取廻しに俊雄は成仏延引し父が奥殿深く秘めおいたる虎《とら》の子をぽつりぽつり背負《しょ》って出て皆この真葛原下《まくずはらした》這《は》いありくのら猫の児へ割歩《わりぶ》を打ち大方出来たらしい噂《うわさ》の土地に立ったを小春お夏が早々と聞き込み不断は若女形《わかおんながた》で行く不破《ふわ》名古屋も這般《このはん》のことたる国家問題に属すと異議なく連合策が行われ党派の色分けを言えば小春は赤お夏は萌黄《もえぎ》の天鵞絨《びろうど》を鼻緒にしたる下駄《げた》の音荒々しく俊雄秋子が妻も籠《こも》れりわれも籠れる武蔵野へ一度にどっと示威運動の吶声《ときのこえ
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