》座敷が座敷だけ秋子は先刻《せんこく》逃水「らいふ、おぶ、やまむらとしお」へ特筆大書すべき始末となりしに俊雄もいささか辟易《へきえき》したるが弱きを扶《たす》けて強きを挫《くじ》くと江戸で逢ったる長兵衛殿を応用しおれはおれだと小春お夏を跳ね飛ばし泣けるなら泣けと悪《あく》ッぽく出たのが直打《ねうち》となりそれまで拝見すれば女|冥加《みょうが》と手の内見えたの格をもってむずかしいところへ理をつけたも実は敵を木戸近く引き入れさんざんじらしぬいた上のにわかの首尾|千破屋《ちはや》を学んだ秋子の流眄《ながしめ》に俊雄はすこぶる勢いを得、宇宙広しといえども間違いッこのないものはわが恋と天気予報の「ところにより雨」悦気面に満ちて四百五百と入り揚げたトドの詰りを秋子は見届けしからば御免と山水《やまみず》と申す長者のもとへ一応の照会もなく引き取られしより俊雄は瓦斯《がす》を離れた風船乗り天を仰いで吹っかける冷酒《ひやざけ》五臓六腑へ浸み渡りたり
それつらつらいろは四十七文字を按《あん》ずるに、こちゃ登り詰めたるやまけの「ま」が脱《ぬ》ければ残るところの「やけ」となるは自然の理なり俊雄は秋子に砂浴びせ
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