られたる一旦の拍子ぬけその砂|肚《はら》に入ってたちまちやけの虫と化し前年より父が預かる株式会社に通い給金なり余禄《よろく》なりなかなかの収入《とりくち》ありしもことごとくこのあたりの溝《みぞ》へ放棄《うっちゃ》り経綸《けいりん》と申すが多寡が糸扁《いとへん》いずれ天下《てんが》は綱渡りのことまるまる遊んだところが杖《つえ》突いて百年と昼も夜ものアジをやり甘い辛いがだんだん分ればおのずから灰汁《あく》もぬけ恋は側《はた》次第と目端が利《き》き、軽い間に締りが附けば男振りも一段あがりて村様村様と楽な座敷をいとしがられしが八幡鐘《はちまんがね》を現今《いま》のように合乗り膝枕《ひざまくら》を色よしとする通町辺《とおりちょうへん》の若旦那に真似のならぬ寛濶《かんかつ》と極随《ごくずい》俊雄へ打ち込んだは歳二ツ上の冬吉なりおよそここらの恋と言うは親密《ちかづき》が過ぎてはいっそ調《ととの》わぬが例なれど舟を橋際に着けた梅見帰りひょんなことから俊雄冬吉は離れられぬ縁の糸巻き来るは呼ぶはの逢瀬繁く姉じゃ弟《おとと》じゃの戯《たわ》ぶれが、異なものと土地に名を唄《うた》われわれより男は年下なれば色に
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