はままになるが冬吉は面白く今夜はわたしが奢《おご》りますると銭金を帳面のほかなる隠れ遊び、出が道明《どうみょう》ゆえ厭かは知らねど類のないのを着て下されとの心中立《しんじゅうだ》てこの冬吉に似た冬吉がよそにも出来まいものでもないと新道《しんみち》一面に気を廻し二日三日と音信《おとずれ》の絶えてない折々は河岸《かし》の内儀へお頼みでござりますと月始めに魚一|尾《ひき》がそれとなく報酬の花鳥使《かちょうし》まいらせ候《そろ》の韻を蹈《ふ》んできっときっとの呼出状今方貸小袖を温習《さらい》かけた奥の小座敷へ俊雄を引き入れまだ笑ったばかりの耳元へ旦那のお来臨《いで》と二十銭銀貨に忠義を売るお何どんの注進ちぇッと舌打ちしながら明日《あした》と詞|約《つが》えて裏口から逃しやッたる跡の気のもめ方もしや以前の歌川へ火が附きはすまいかと心配ありげに撲《はた》いた吸殻、落ちかけて落ちぬを何の呪《まじな》いかあわてて煙草を丸め込みその火でまた吸いつけて長く吹くを傍らにおわします弗函《どるばこ》の代表者顔へ紙幣《さつ》貼《は》った旦那殿はこれを癪気《しゃくき》と見て紙に包《くる》んで帰り際に残しおかれた涎《
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