れぬ橋手前の菊菱《きくびし》おあいにくでござりまするという雪江を二時が三時でもと待ち受けアラと驚く縁の附際《つけぎわ》こちらからのように憑《もた》せた首尾電光石火早いところを雪江がお霜に誇ればお霜はほんとと口を明いてあきるること曲亭流《きょくていりゅう》をもってせば半※[#「日+向」、第3水準1−85−25]《はんとき》ばかりとにかく大事ない顔なれど潰《つぶ》されたうらみを言って言って言いまくろうと俊雄の跡をつけねらい、それでもあなたは済みまするか、済まぬ済まぬ真実済まぬ、きっと済みませぬか、きっと済みませぬ、その済まぬは誰へでござります、先祖の助六さまへ、何でござんすと振り上げてぶつ真似のお霜の手を俊雄は執《と》らえこれではなお済むまいと恋は追い追い下へ落ちてついにふたりが水と魚との交《なか》を隔て脈ある間はどちらからも血を吐かせて雪江が見て下されと紐鎖《ぱちん》へ打たせた山村の定紋負けてはいぬとお霜が櫛《くし》へ蒔絵《まきえ》した日をもう千秋楽と俊雄は幕を切り元木の冬吉へ再び焼けついた腐れ縁燃え盛る噂に雪江お霜は顔見合わせ鼠繻珍《ねずみしゅちん》の煙草入れを奥歯で噛んで畳の上敷きへ
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