髪が蓬のやうに乱れて居る。年正に六十。多年の孤身苦闘に、巌丈な肉体も綿のやうに疲れ切つて居る。譬《たと》へば、深傷を負うた一個の老獅子。
十七日、彼は又演壇に立つた。先づ彼の質問書を見よ。
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『亡国に至るを知らざれば、これ即ち亡国の儀に付質問書民を殺すは国家を殺すなり。
法を蔑《ないがしろ》にするは国家を蔑にするなり。
皆自ら国を毀《こぼ》つなり。
財用を濫り民を殺し法を乱して而して亡びざるの国なし、これを奈何《いかん》。
右質問に及候也』
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彼はその長演説の終りにかう言うて居る。
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『兇徒嘯集などと大層な事を言ふなら、何故田中正造に沙汰をしなかつたのであるか。人民を撲殺す程の事をするならば、田中正造を拘引して調べないか。大ベラ棒と言はうか。大間抜と言はうか。若しこの議会の速記録と云ふものが皇帝陛下の御覧にならないものならば、思ふざまキタない言葉を以て罵倒し、存分ヒドい罵り様もあるのであるが、勘弁に勘弁を加へて置くのである。苟《いやしく》も立憲政体の大臣たるものが、卑劣と云ふ方から見ようが、慾張り云ふ方から見ようが、腰
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